2010年10月
一人称の反復  (2010.10.14)

Facebookへの書き込みやら何やらで外国語で文章を書く機会が増えている。英作は勿論のこと仏作だって得意な方ではないので、書かざるを得ないという方が適当かもしれない。特に前者は「五文型って何だ? あァん?」みたいな為体なので、ダラダラ書くとそれはそれはひどい文章ができあがる。

自分の語学力のなさはとりあえずそんな惨状なので放置しておくとして(してはいけません)、Facebookのニュースフィードをつらつらと眺めつつ自分で書く文章をタイプしていると気付くことがある。それは、日本語と同様のノリで文章を書いていると、結果として一人称単数の主語が反復されてそれはそれは端から見ていて見苦しくてガキっぽい文章ができあがるということだ。これは日本語では主語の省略が容易であることと自動詞と他動詞の区別が曖昧であることにも起因しているのだが、これをそのまんまインド-ヨーロッパ語族の文章に持ち込むと「私は〜、私は〜、私は〜」と繰り返される悪文の見本のようなものができあがる。Twitter風に例を示そう。

「スタバなう。モカフラペチーノグランデうまい。サランボー読みながら優雅な午後」
これに主語と適切な言葉を補うとこんな感じになる。

「私は今スタバにいる。今私が飲んでいるモカフラペチーノのグランデは大変おいしい。私は『サランボー』を読みながら優雅な午後を過ごしている」

これだけの文章で「私」が三回も出てくる。正直読む側としてはウンザリだ。そんなに私私言いたいのかと。

その点、これをすっ飛ばせる日本語はよくできた言語だと思う。だが主語の概念がガッチリとうるさい西欧近代語(イタリア語は省略できるけど)に訳した瞬間にその問題は露呈することになる。従って、同様の水準で別の言語で文章を起こす場合、文の構造自体に手を加えて語順を入れ替えるなどの処理が予め必要になるのだ。
それゆえ、母語とは別の言語で書き込みを行う場合は一旦頭の中で内容を意味連関もひっくるめて整理してやる必要があるのだが、これができる人は多くない。いわゆる英会話学校でライティングの講座が異様に少ないのは、当該言語を母語としている連中でもそこまで自覚的になれる人間がいかに少ないかということの証明でもあるのだが、そこまでできて漸く言語は「書ける」と言えるのではないかと思う。


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