2008年11月
アイリッシュパブとバッカナールで飲む  (2008.11.30)


先週、早稲田の学部時代からの古い友人のA君から何年かぶりにメールが届いた。東京芸大の大学院にて芸術学Dを取得したという話はメールで数年前に聞いていたのだが、その後はとんと音信不通だった。で、訊けば今は銀座にお勤めでいらっしゃるとかで、金曜日は飲むことにした。なんかここ数週間金曜日は飲んでばっかり。帰仏前に肝臓を壊しては洒落にならないのだが12/12と12/19はいずれも忘年会で痛飲確定なので今度の金曜日は休肝日にしたいなあ……(「きゅうかんび」で正しく変換できるATOK2008は誠に日本的であるハラショー)。

とりあえず場所は流れで決めようということで銀座で合流し、A君お勧めのDuffy's(http://www.newtokyo.co.jp/tempo/duffys/duffys.htm)というアイリッシュパブへ。あ、Hubではないので1リットルタワービアはないですが、キルケニーとかボウモアとかいつも飲むものを呷りつつ昔話に花が咲く。教育産業はやりがいはあるけど長年いる講師にはアレな人が多いとか、やっぱ給料安いとか、社長はワンマンだとか。中小の進学塾はどこもあんま変わらない。でも大昔転職活動時に内定をもらったけど蹴った某A光ゼミナールも大手のクセして提示した給料は泣くほど安かったですよ。

で、一通り飲んだところで河岸を変えてAux Bacchanales(http://www.auxbacchanales.com/)でワインを飲むことに。本当はロテスリー・レカンとかで軽く飲もうと思ったのに金曜はコースだけとかで諦めました。えー、昔行ったときには常連とおぼしき老婦人が料理一皿と食前酒+ワインで帰ってたけど?

バッカナールでは何年ぶりだろう、ホットワインを飲んだ。次いでHautes Cotes De Nuit 2005(Michel Gros)を一瓶空けてしまった。おいしかった(小学生の作文みたいだ)。ガメイ種の割にはピノ・ノワールを思わせるフルーティな味わいが残っていたのは熟成が進んでいなかったからか。確かにデキャンタージュさせるとそれなりにタンニン分がコクとして感じられる深みのあるいい味に。

で、色々と話した。いやむしろ、一方的に話しただけかもしれない。この点は反省すべきだと思うが、仕事ではゼニゼニゼニゼニな話ばかりしていると、精神の平衡が完全に崩れてしまう。特に社外の人間に対して平気でタメ口で値切りを要求してくるような人間との交渉をした後などはほぼ例外なくやけ酒を呷るものだが、正直言って多分私はこういう世界で働くのは向いていないと思うことは日々に一度や二度ではないし、比較的絵画に詳しかった上司が9月いっぱいで辞めてしまってからは、職場での芸術談義はより一層不毛のテイストを強めている。そんなこんなでA君には気詰まりな思いをさせてしまった場面が少なからずあったと思う。A君本人もここを読んでいるらしいので、この場を借りてお詫びしたい。

また、A君の彼女が近所にお勤めのことで、かなり無理を言って来てもらった。お疲れの所バカなお願いを聞き容れて下さったお二方には御礼を申し上げたい。
色々と話したのは覚えているのだが、酔っぱらいモードに入っていたのでこれまたグダグダな状態だった。

話の途中では、A君の博論のテーマでもあるミケランジェロの彫刻の成立過程について色々と話を聞いた。アカデミア美術館に展示されているダビィデ像は足下のある地点から見上げると、消失点が頭上のガラス天井に着地するので見事な迫力を堪能できるため、昨年見たときは完璧なまでの計算に基づいた構成に「クァーーーーー!負けた!」と唸ったのだが、彼に言わせればその過程にも色々あるそうで、そういうのが分かるとまた楽しみも多いと思うのだ。

当然のことながら、芸術作品を見たり聞いたりする時、多くの場合直接的に残るのはその印象であると思う。キャッチーなフレーズを持つ曲や極めて印象的な構図を持つ絵画が多くの人にとってそれらがタグとなって記憶されていることは私も良く知っている。だが、恐らく、そうした表層的な構造を超えて、作品の成立過程や、それが練り上げられていく過程を作品の細部に沈潜することで追うことができるのは、印象に快い作品を消費することの楽しさを凌駕する。偉大な芸術作品を静かに、そして見かけに拘泥することなく知ろうと努力する時、私は少なくとも人間の精神の本当の偉大さ、素晴らしさ、そして無限の高みに至ろうとする強烈な恐ろしさを感じずにはいられない。そして、そういう経験を私よりも遙かに多く味わってきたであろうA君には、正直言って私は嫉妬せずにはいられないのだ。


鞄が届いた  (2008.11.29)

今までカメラを持って外出するときはD70を買った時にポイントで引き替えたエツミかどっかのシューティングバッグを使っていた。ハンドリングは結構よかったが交換レンズとかテーブル三脚とかアクセサリーが充実してくるに従って容量面でのデメリットが目立つようになってきた。実際、昨年イタリアに行ったときはカメラを収納するのに普段使いの鞄にインナークッションを入れて街中を歩いていたのだが、当然の如く大変に使い勝手が悪いのに加え、最近ではファスナーの辺りが壊れてきた。比較的混んだ外国の交通機関に乗ろうものなら一発でスリに遭ってしまう。
そんなわけで少し前から街撮りの時にも使えるカメラバッグを探していた。ところが多くのカメラバッグは機能性最優先であるため、デザイン的にちょっとアレなものが多い。かといってそれなりに好感の持てるデザインのものは収納性がボロボロ……といった具合で、なかなかにいいものが見つからなかったのだが、某カメラ量販店の店頭で色々と物色していたところ、ドンケのF-3x(こちら)が比較的中庸を得たデザインと収納性を備えていると思えたので、オリエンタルホビーの円高還元セールに乗じて購入することにした。送料込みで約1万7000円。

で、それが今日届いたのでテストがてら色々と詰め込んでみることにした。




普段写真撮影を念頭に置いて行動するときの機材一式を詰め込んだらこんな感じ。とりあえず全部入りました。





で、詰め込んだ様子を上から写してみた。入っているのは、
・D300+AF-S DX VR Zoom-Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G
・12-24mm F4.5-5.6 EX DG ASPHERICAL HSM
・Ai AF Nikkor 35mm F2D
・ルミコントロールセットML-3
・ULTRA MAXi mini(テーブル三脚)
こんだけ入れているので、パンパンの状態。
果たして、蓋は閉まるのか?





何の問題もなく閉まりました。サイドポケットはさすがに安全上の問題があるのでガイドマップとかの紙類を入れておけばよろしいかと。もちろん日本国内をウロウロするときなら財布とか携帯電話とか入れてもいいでしょうが。


知人の個展にて  (2008.11.25)


11月の上旬に知人の個展に行った。

ひとしきり芸術談義に花が咲き、楽しい時間を過ごせたように思う。
もちろん立場の違いは色々あるのだけれど、それを前提として議論ができるというのは実に楽しい。

私個人は単なる文化産業の末端消費者に堕落してしまったけれど、こういう楽しみを続けていくためにも、勉強しないとダメだよね。


音楽三昧  (2008.11.24)


今週はコンサートとオペラに一回ずつ出かけた。行った順に感想。

11/20(木)
ヤナーチェク『マクロプロス家の事』@日生劇場
新日フィル&クリスティアン・アンミルク
演出:鈴木 敬介

ヤナーチェクのオペラといえばそもそもがチェコ語での上演がマストなわけで、その段階でまず難易度が大幅に上がる点、よく挑戦したとこの点は褒めて然るべきだと思う。
しかしながら、オーケストラの演奏については改善の余地が沢山ある。確かにヤナーチェクの旋律に特徴的なゴツゴツ感はよく出してはいたものの、歌い手が複数にまたがりややこしい場面になってくるとアンサンブルが明らかに崩壊していた場面(第一幕の後半とか)も何カ所かあり、アンミルクは批判すべきなのか同情すべきなのかは分からないが、少なくとも今の新日フィルにはヤナーチェクは荷が重いのはよく分かった。「シンフォニエッタ」あたりからやり直せ!
次に歌手。全然知らない言語なのによく頑張ったと思う。そもそもが自分がセリフのどの辺りを歌ってるのか判然としないものを覚えるのは辛いだろうなと思う。また、第1幕と第2幕では今ひとつノリの悪かった小山由美@マルティが第3幕では長生きすることの空しさとかを延々と歌い上げる辺りは鳥肌が立つほどの出来だったと思う。あとはプルス男爵役の大島幾雄もなかなかの熱演で、やりたいやりたいやらせろやらせろというのが伝わる歌い方だった。
だが、ここまで歌唱陣が頑張っているのに許せなかったのはプロンプター。日生劇場が音響的にアレという点を差し引いても、盛り上がりの場面で入りの指示が聞こえてくるのは思いっきり興ざめ以外の何物でもない。
いずれにしても、こういう作品は上演回数をこなしていく事でそれなりに練れていくものだから、次回以降の洗練に期待したいと思います。魔笛とかに比べると集客力は期待できない作品なので、次がいつになるかは分かりませんが。


11/23(日)
アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団@東京オペラシティ
指揮:エドゥアルド・トプチャン
ボロディン:『イーゴリ公』よりダッタン人の踊り"
ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 (独奏Vn:カトリーヌ・マヌーキアン)
ドヴォルザーク:交響曲第9番 op.95

アルメニア・フィルといえばチェクナヴォリアン時代のハチャトゥリアン交響曲全集の録音が一部の好事家には非常に有名で、1時間近くずっとffffでぶっ通す曲をよくやったもんだと呆れると同時に感心する名盤だったりするのだが、それが日本に来るという知らせをぴあ経由で知り、日本ツアー最終日の演奏を聴きに行った。
ホワイエにてプログラムを入手し今回のツアーの概要を見たが、かなり猛烈なスケジュールだった模様。東京でソワレをこなした翌日は福井でマチネ、更にその次の日は岡山でマチネ……って乗り打ち大半としてもこりゃあ大変だなあと思った。

さて、曲ごとの感想。
1.『イーゴリ公』よりダッタン人の踊り"
有名すぎる曲なのでそんなものなのかね〜とタカをくくっていたら、これが暑苦しくて素晴らしい出来。「うまいじゃんか」と独白してしまった。但し例によって例のごとくテンポはありがちな演奏の3割増。ハラショー。

2.ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲
これはちょっとひどい出来だった。ソリストのマヌーキアンの経歴を見ると、ジュリアードでドロシー・ディレイの弟子だったようで、あー、そういうツテで出ているのかねと勘ぐりたくなるくらいのボロボロ演奏。第2楽章の歌いっぷりを聴く限り、どうもマヌーキアンはメロディアスなものが得意であり、突撃騎馬隊全力疾走型のこの曲とは合わないんじゃないかと。音もちょくちょく外していたし、第3楽章205小節目辺りのハイAへのジャンプは露骨にミスしてたのでこれは……と嘆息した次第。
無論、ハチャトゥリアンのVn協奏曲はカデンツァを筆頭に超絶技巧の限りと騒音演奏を豪快にこなすパワーを要求される超超超難曲なのは百も承知ですが、第1楽章の200小節目辺りからアインザッツが飛んだり、第3楽章の「バラによせて」の主題変奏の辺りはアンサンブルが崩壊していたのはロバでも分かります。
いやー、オイストラフって凄いヴァイオリニストだったんですね。

3.ドボ9
文句なしのハラショー演奏。こんな惜別感に溢れ、かの国への郷愁を誘う演奏があっていいのかと思うほど。終楽章は泣きそうになった。
実際ドヴォルザークの「新世界から」は技術的にそんなに厳しいものを要求されるものではないし、メロディアスで集客能力の高い曲であるのは事実なんだが、「あーらやだー、まーたやっちゃったー」の主題でホルンが音崩れを起こさず歌いきる辺りは当たり前だとしても聴かせる。
第2楽章は「家路」という後付けタイトルで連想する静かさではなく、ドヴォルザークという「偉大な田舎者」が故郷のボヘミアの風景に向けて歌う心が伝わってくる演奏。日本ツアーはこれで終わり、明日か明後日には祖国アルメニアに帰るんだというオケの一致した気持ちが伝わってきた。
そして終楽章。力の限り唸りを上げる第1主題の弦、そして惜別を告げる第2主題の木管群。明らかにスコアの音量指定を無視して歌いまくるところも経過部では多々見られたがそれがまた必然的にすら感じられてしまう熱さ。こういうの大好きだ。
フィナーレの和音。アルメニア・フィルの日本への別れを感じさせる緊張感と解放感、そして音楽への喜びを携えた沈黙。オーーーーーチンハラショーーーーーーーーーー!

4.アンコール
『ガヤネー』より「レズギンカ」と「剣の舞」
彼らにとってはいずれもほとんど民謡みたいな曲なので実に楽しそう。前者はスネアの独特なリズムがアルメニアならではの節回し。ワルツにおけるVPOみたいな独特のリズムが恐らく他のオケにはできないものだと思う。
「剣の舞」はいわゆるゲルギエフ倍速版(知らない人はhttp://www.nicovideo.jp/watch/sm1315181 にてチェック)。さすがにフルート酸欠地帯はテンポ落としてたけど笑った。
全体でいえばこれだけの演奏が6000円で楽しめたのはお買い得だったと思う。定価だったらハチャトゥリアンのVn協奏曲の分だけ文句を付けたくなるが、小生はドボ9の暑苦しさと郷愁溢れる演奏で満腹でした。


HDL-GT2.0再構築:苦難の道のり  (2008.11.23)


今年の前半にPCが壊れ、他のマシンと共有していたデータの使用にえらく苦労した経験から、I-O DATAのHDL-GT2.0(http://www.iodata.jp/product/hdd/lanhdd/hdl-gt/)をファイルサーバーとして使っている。ソフトウェアRAID5なので書き込みが死ぬほど遅いのは予想の範囲内だったので仕方ないのだが、外付けHDDからのデータコピーの失敗とかが結構多く、そうこうしているうちにディスクチェックをしたら欠陥(不良セクタではなく多分チェックサムの不一致)がたくさん出てそのたびに修復という高信頼性とは全く逆の惨状に陥っていた。それもこれもサムスンのHDDなんか使うからだとか文句をいいつつ、そのうちHDDをSeagateかHGSTのやつにでも全交換しようと思っていたものの、とりあえずRAID崩壊とかそういう緊急事態に陥っていなかったので放置していた。

で、9月にI-Oデータのサイトをチェックしてみたところ、新しいBIOSが公開されていて安定性が向上したとか書いてあったのでアップデートをしようとしてみたところ、500エラーが出てアウト。コマンドラインでのログインにて当該cgiの権限を変更すれば直るだろうからやり方教えろとI-Oデータのサポセンにメールしてみたら、「そんなことはできませーん」とのお返事。で、バックアップを取ってシステム初期化をしろというほとんどテンプレ化した答えが返って来るのみだった。あのさー、1TBを超えるデータをそう簡単にバックアップできるなら苦労はしませんてば。どうせ家庭内でしか使わないんだからコマンドラインでのログイン手段ぐらい教えてくれよ……
そんなわけで、1TBのHDDの値下がりをにらみつつ、いつ再構築するかをビクビクしながら考えていた。もちろん、写真とか音楽とかの大事なファイルはローカルのHDDにコピーしてバックアップしてましたが。

そうこうしているうちに、HGSTの1TBのHDDも1万円くらいで買えるようになったので、秋葉原の某店にて購入。2週間ほどかけて修復作業を行っておりました。以下その顛末。


1日目
買ってきた1.0TBのHDDをまずNTFSにてフォーマットし、HDL-2.0GTに接続、管理画面から自動コピー開始!……ところがApacheはNTFSは読み込みには対応しているけど書き込みはできないのでエラー。仕方ないのでFAT32にて再フォーマットして自動コピー開始。時間がかかるので寝る。

2日目
起きてみたら自動コピーがエラーで停止。はあ? と調べてみたらFAT32は4GB以上のファイルには対応していない!すげー昔のファイルシステムだったのでそんなこと忘れてたよ。HDL-GT2.0にはDVDのイメージファイルとか4GBを余裕で超えるファイルが山ほど入っているので、自動コピーをここで断念。サブで使っているLet's Noteに1TBHDDをマウントし直し、再度NTFSにてフォーマット。
フォーマット完了後、今度はLAN経由でデータコピーを行う。GigabitLAN環境(MTU調整済)なのにファイルが細切れなので8MB/Sec程度の転送速度しか出ない。でも他に方法はないので放置。4日ほどかけて全データをバックアップ。

6日目
コピー完了。HDL-GT2.0の初期化を行い、BIOSを入れ替える。空のディスクをチェックしてみたが問題なし。ローカルIPアドレスの再設定をして、eSATA端子に1.0TBのHDDを接続し、読み込みバックアップ開始。
……遅いよ? eSATAなのに6MB/Sec程度の転送速度って一体どういう事? 大きいファイルもコピーし出すとさすがに転送速度が上がるけど、10時間で100GB程度しかバックアップできていない。ということは(デスクトップマシンに待避させたデータも含めて)全部コピーし終わるには100時間以上かかるということか。地球に優しくないよな……。
トラブルが起きたらログに表示されるはずなので、放置。

10日目
コピー中ランプの点滅が終わり、コピー終了を告げる。ログを見たところ特にエラーはない模様。やれやれ。
ところが、バックアップしたデータはバックアップ専用ディレクトリの奥深くに格納されているため、元に戻すにはディレクトリの配置換えを行ってやらなければいけない。こういう時コマンドプロンプトが使えれば……と恨み言がまた増えたが、Let's Noteからフォルダの移動を指示し、放置。データの再移動が発生するわけではないが、移動コマンドのやりとりがHDL-GT2.0とLet's Noteの間で発生するので時間が結構かかる。また放置。

11日目
フォルダ移動も完了した模様。HDL-GT2.0のディスクチェックを再度行ったところ、特に問題もなく動いている。
あーやれやれ、2週間かかりましたよ。


シラノ・ド・ベルジュラック(初台)に行ってきた  (2008.11.22)


フランス語の師匠の娘さん(Mさん)が彼氏(ピエール氏)共々日本に一時帰国しているとのことだったので、一緒にメシでも食いましょうということになり、金曜日は初台のシラノ・ド・ベルジュラック(http://r.tabelog.com/tokyo/A1318/A131807/13001051/)に行ってきた。ザガットサーベイでも料理に関しては24点という高評価を得ている店でもあり、過去に何度か予約に挑戦しては敗退を繰り返してきたのだが、今回は偶然にも予約することができた。
ちなみに非常に分かりにくいところにあるので、初めて行くなら地図はプリントアウトしていくべきかも。

で、とりあえず5500円のコースCを選び、左大臣が食したのは以下の通り。

前菜:エスカルゴと茸のパイ包み・季節の野菜添え
魚:ホウボウのグリエ
肉:カスレ
デザート:ガトーショコラにバニラアイス添え

よく覚えていないが他にも田舎風パテとか鴨のコンフィとか仔羊のグリエとかお料理あいして食べた。

で、酒は以下の通り。
食前酒:チンザノ(白)
前菜時:Paul Kubler (Pinot Blanc) 2005
メイン:Gevrey-Chambertin Clos des Varoilles 1995

野菜の繊細な味わいと食べ応えのあるサイズにカットされたジビエは幸せ感が高く、非常にコストパフォーマンスが高いと思う。ゴチになったのであんまり悪くはいいたくないが、渋谷の某カウベルよりずっと味も雰囲気もいい店なので、予約できるならこっちにすべきです。

以下各論。
前菜:エスカルゴの味付けが行き過ぎずかといって生臭くもなく、パイ包みのパリパリ感と合わせ、良好な味わい。クレソンへのドレッシングは少々脂っこかったが、野菜の味わいをスポイルするほどではなく、パンと合わせればむしろ食欲増進請け合い。

魚:ホウボウ自体をピエール氏が知らず、Mさん共々適切な訳語を探しあぐねていたところ(Mさんは仏検1級の合格者である)、店の方が魚類図鑑と共に説明して下さり、感謝。
味自体は普通というべきか。表面はカリッと仕上がっていたが中はフォークで簡単にほぐれる。ソースは多分バルサミコ酢ベースにガーリック風味で仕立ててあると思うのだが、詳しいことは不明。でもおいしいよ。

肉:カスレ。カスレは通常白豆をグツグツ煮て作るのだが、黒豆ベースのため、肉が多いこともあり一見するとブラジル料理のフェージョみたい。つかこれはフェージョです。
ソースの味付けは比較的控えめで、ズッキーニや人参の旨味が嫌味にならない程度に自己主張をしており、なおかつ肉のコクを引き出すようにあしらってある点が上手だなと思う。昔留学中に学食で食ったカスレは貧相極まりない味付けで塩とか胡椒とか大量投下しないと食えた代物ではなかったが、シラノ・ド・ベルジュラックのは全くの別物と思った方がいい(当たり前)。

デザート:普通。でもガトーショコラにさりげなくバナナエッセンスが隠し味として入ってる辺りは抜かりない。ピエール氏はココナッツ風味のフランがいたくお気に召したようで、レシピをお店の方に訊いていたので通訳。

翌日、師匠のフランス語の講座のために昼食がてらでかけていったところ、師匠曰く翌朝も二人は昨晩の食事のことを褒めていたそうで、こちらとしてもフランス人をフランス料理屋に連れて行くというチャレンジブルな提案が上首尾にいったことに関しては、一安心した次第でありました。

小さい店で、予約が取りづらかったり店内のインテリアがちょっとアレだったりするところはありますが、このビストロはかなり個人的にはお勧めできるいい店だと思います。


道は遠く朝も遠い  (2008.11.18)


アドホック案件で大学院の先輩にお願いする用件が発生したため、先週末に打ち合わせ。
ようやくこれで人的資源の手配が終わったわい……と思いきやクライアントの内部事情でいきなりの案件キャンセル。こちらは既に作業発生してるのにその費用を払わないとか言ってるし何ですかそれ? しかもそんな時に「この会社は契約書結ばないのはおかしい」とかくだらねえ話をウダウダ言う(だったらそんな泥沼案件こなさなくても会社の経営が回るくらい売り上げ立てて欲しいものだ)人もいたりして勤労意欲はもうゼロです。
年明けから転職には動く予定ですがもう嫌だこんな環境にいるのは。努力に対するインセンティブが余りにもダメすぎだ。

無論、ダメな人間としか仕事ができないのはこちらがダメだからなので、ダメから脱却すべく抵抗するしかないよね〜。

それはさておき、その案件についての打ち合わせを先輩としていた折、遠ざかって久しい大学院の知人友人の話を色々と聞いた。人文系オーバードクターの生活が悲惨すぎて笑っちゃうのは当然の予想なのだが、私の同期の某氏――2浪して博士課程まで行って助手になったところまでは知っていたのだが――が離婚したという話を聞いた。オーバードクターの夫君の生活を支えるという見通しで嫁さんは公務員になっていたりしていたはずだが、それもダメになってしまったということなのなのだろうか。


かくして、希望も、喜びも、連帯もない人生というのは生きるに値するのかとか時々思う次第です。


Operation "Vita Nova"  (2008.11.09)

何でVita Nuovaじゃないの? という疑問はシーニュの戯れによって曖昧にごまかすとして、前にも少し書いたように、年末にフランスに旅行に行くことにした。3週間の休暇予定はあっけなく上司に却下され ―― 今年に入ってから有給を一日も使っていないとか休日出勤が10日近い(休日出勤手当が付かないことについてはクライアントから同情されたというオマケ付き)ということは理由にならないらしい、そんな調子だからこっちも労働意欲が落ちるのだ ―― 、仕方なく半月の予定での旅行だが、訪ねる予定の都市は以下の通り。ええ、結構なハードスケジュールですよ。

・パリ
・ブザンソン
・リヨン
・ロキュブリュヌ(マントン)

どこをどうフラフラしようかという予定は全くないに等しいのだが、リヨンは大野和士が首席指揮者を務めるリヨン国立歌劇場に行くかポール・ボキューズに行くか迷った結果、滞在中にはコンサートがなかったので食い道楽優先で後者に予約を入れた。メールアドレスの入力を間違えたら自宅に国際電話がかかってきたのにはびっくりだ。

基本的にはブザンソンとロキュブリュヌは知り合いを訪ねる予定。色々と積もる話も多々あるので、そこはしっかりと言葉を交わしていかねばならない。

昨今のユーロ安はそんなわけで実に歓迎すべき話なのだが、帰国してカード払いを精算してしまったら一文無しに戻ることはほぼ確定している。そんな状況でどうVita Novaを紡ぎ出すのか、それはとりあえず不問に付すとしたい。

いろんな事情で労働へのモチベーションは絶対零度に絶賛大接近中だけど、明日も積みタスクは山のようにあるし、とりあえず賞与の時期までは生存していないといけないので、感情という感情は全て封印してキーボードを叩くことにしよう。


無題  (2008.11.04)


夜のコンビニ。


無題  (2008.11.03)


某ショッピングモールにて。
30年後、どうなっているのだろうかと考えた。


無題  (2008.11.02)


書き物机の上の風景。


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