2008年03月
MyAlbum閉鎖か  (2008.03.30)

イタリア旅行の写真をおいていたMyAlbumのメンテナンスが全然終わる気配がない。正直言ってサイト運営にはやる気がかけらも感じられなかったので、潰れるのは時間の問題だろうとは思っていたのだが、予告なしにこういう状況となると移行先を真剣に考えないといけない。
無論、tunnel-company.comのサーバーに写真をホスティングしても構わないのだが、現在借りているサーバーの割り当て容量はわずか300MB&Webサイト用に確保している容量は240MB(残りはメール用)なので、XGAサイズの写真をアップしたらあっという間にパンクしてしまう。ちなみに現在の使用量はアクセスログも含めておよそ90MB。MyAlbumにアップした画像の総量は291MBなので、どう考えてもアウトだ。

で、MyPictureTownとかを移転先で考えてはいるのだけれども、Exifが表示されないので他の人の写真を見て勉強しようにもちょっと不便。Flickrでも別にいいんだけど、Exif表示にワンクリック入るので、オペレーションとして面倒臭い。
タダなんだから贅沢言うなといわれればそれまでなのだが、ちょっと思案中。


眼光紙背に徹す  (2008.03.25)

遅い年賀を兼ねて、遠くの友人(食い道楽で飲兵衛で息子にロマン・ロランの某小説の主人公と同じ名前を付けちゃうほどのクラシック好き)にミシュラン東京版を送ってやったところ、わずか10日で返事が来た。通関申告書に本の価格を「10円」と書いて申告したのでもしかすると没収されているかもとビクビクしていたが、割とあっさり届いたようだ。

さて、返事の内容は相変わらず機知に富んだもので、サルコジのことを「鼻つまみ者」と書いたりするあたりは変わらないなあと思う。他にも本を早速しっかり読んでくれている内容。有難い。
それだけなら別段普段と変わりない単なる手紙のやりとりなのだが、追伸には私が仕事等で変調を来しているのではないかとの一節が。本に同封して送った手紙にはそんなことはおくびにも出さず「ミシュラン東京版に載った店なんか滅多に行けないけど日本に来るならおもてなししてやるぜヘイ」みたいなことを書いただけなのだが、文面には全く表していないはずの私の変調ぶりを衝いてくる彼の炯眼ぶりには正直言って驚くと同時に、友情のありがたみを痛感した。
彼は元々は独語と仏語の教師なのだが、私にとっては論文(とラテン語)の師匠でもある。論文の口頭試問に臨む前に添削をお願いしたところ、真っ赤っ赤にされて半泣きになりつつ書き直しをしたのは今となってはいい想い出だが、色々な失われたものを少しずつ組み立て直すためにも、時間が取れたらまた彼と酒を酌み交わしに行ってこようと思う。


買うよ  (2008.03.23)

新聞にて、いとうせいこう氏がビルマ(左大臣はビルマの国名について「ミャンマー」は使用しません)軍政と昨年7月の民主化運動弾圧に反対するTシャツを作ったという記事を見かけたので、早速2枚ほど購入することにした。

私自身は仏教徒でも何でもないただの無神論者なので、背中にある「WE ARE BUDDHIST, TOO」というメッセージは書き換えざるを得ないのだが、それでも一枚あたり1000円が「ビルマ民主の声」に寄付されるのであれば喜んで抗議Tシャツを着よう。

昨日今日と色々ムチャクチャ腹の立つことがあったのだが、マルクス・アウレリウスの箴言を胸に刻んで、明日に備えて寝ることにしよう。


ドナステラ・クチーナ・オオサコに行ってきた  (2008.03.20)

さて、昨晩は先日の食事会にてお目にかかった方からお声がかかったので、友人も交えて4人で銀座のドナステラ・クチーナ・オオサコに行ってきた。ザガット・サーベイでも食事については24点(但しサービスは17点)という高スコアを叩き出しているお店であり、運良く予約が取れた。

事前情報通り、給仕氏が「この店の料理は量が多いからシェア推奨ですよ〜」みたいなことを言う。前菜+サラダ+パスタ(200g以上)+口直し+魚+肉+口直し+デザート+プティ・フールの物量攻撃をイタリアでこなしてきた小生には写真で見た程度の量など問題でも何でもないのだが、同席者の胃袋を考え前菜2皿+パスタ+メイン4皿で攻めることに。

で、サイトがないので食したものはうろ覚え+Webからのコピペ。こんな感じだったと思います。

食前酒:スパークリングワイン。味からするにプロセッコっぽかったが、もしかすると安い安いフレシネ・コルドンネグロかも。
1.前菜:生ハムとモッツアレラのルッコラ添え&白アスパラガスと5種類のチーズのソース和えをシェア
2.パスタ:カルボナーラ 鴨の切り身添えをシェア
3.メイン:以下の物を頼み、欲しい人優先で。小生が食べたのは一番上。
沖縄琉球ロイヤルポークの骨付きロースグリル、葡萄の絞り汁で作ったマスタード添え
スモークした子羊ロースのグリル
鴨のフォアグラ いちごのキャラメルソース
ホロホロ鳥のフリット その卵を使ったオムレツ
4.チーズの盛り合わせ:
ゴルゴンゾーラやミモレット、モルビエなど。
5.デザート:
マロングラッセのアイス エスプレッソがけ
無農薬イチゴのミルフィーユ,クチーナ オオサコ スタイル
キャラメルのアイス
酒:シャルドネ(フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州産)及びバローロ(Barolo BroglioかEnzo Boglietti 2005だと思うけど詳しくは忘れた)

まず総論から言えば、大変においしかったです。一緒にテーブルを囲んだ3人も、皆「この前の所(Aux amis Tokyo)よりずっとおいしい」と言っていました。以下各論。

1.前菜
a.生ハムとモッツアレラのルッコラ添え:生ハムが少々歯ごたえに欠けるほどの薄々スライスだったが、味自体は良好。モッツァレラはフレッシュで生臭みが少なく、噛むごとに濃厚な味が滲み出てくるおいしさ。でもルッコラがヘナヘナだったのはいただけない。
b.白アスパラガスと5種類のチーズのソース和え:まず白アスパラガスがうまい。チーズのソースが結構濃厚だったため、ともすると「チーズの味しかしませんよメーン」と安物サラダに流れかけるのを白アスパラの甘味が全力でブロック。良いかな良いかな。

2.パスタ(カルボナーラ 鴨の切り身添え)
確かに量は多いです。女性だとこれも含めてコースを完食するのは確かに厳しいかも。
味は上品。鴨はスモークされていたのかな?独特の香りがあり、どうしてもカロリー重視で平板になりがちなソースに対していいアクセントになっていました。でももう一工夫して香りを楽しめるものにして欲しかったかも。

3.主菜
左大臣は沖縄琉球ロイヤルポークの骨付きロースグリル、葡萄の絞り汁で作ったマスタード添えを食べたが、ポークが実に美味。口に入れて肉に歯を当てると旨味が口いっぱいに広がる。幸せ。
葡萄+マスタードソースは豚の味わいを殺さず、むしろ肉臭さを適度に押さえると同時に甘味を加えることでバランスを引き出すもの。肉料理にジャムなどを付けて食べることに抵抗がある日本人は少なくないが、恐らくそれを考慮してマスタードをきつめにしてあるのだと思う。でも個人的には葡萄風味はもっと強くても十分OKだと思う。マスタードはディジョン風に酢を加えたものだと感じたが詳細は不明。

4.チーズ
少ない少ない少ない少ない。一切れあたり小指の第一関節くらいしかないというのはどういう事だ! 翌朝鼻血が出るほど沢山出せとは言わないが(そんなことをしたら店は潰れる)、ゴルゴンゾーラは4倍くらいの体積にして貰わないと食べた気がしない。コストアップしてもいいので増量を強く望む。
でも付け合わせに干し無花果を出してきたのは適切。

5.デザート
左大臣はマロングラッセのアイス エスプレッソがけを注文。
栗の風味が季節はずれではあるがおいしい。でもエスプレッソの強い香りが栗の味わいを少しスポイルしているような気もしないでもない。但し、サーブされるときに給仕氏が目の前でエスプレッソをかけてくれるのは楽しい。

これだけお腹いっぱいに飲み食いして一人あたりの費用はオザミトーキョーの6割程度で上がっております。バローロみたいな高い酒を飲まなければもっと安く上がります。そんなわけなので少人数でワイワイと楽しくイタリアのご飯をおいしく食べるなら自信を持ってお勧めできます。でも給仕氏は確かにひとくせある人物なので、手綱をしっかり握りつつ彼のフリーハンドにある程度任せられる鷹揚さがないと、イラッとくるかもしれません。


モーツァルトを聴いて涙ぐむ  (2008.03.18)

昼休みに立ち寄ったCD屋でキース・ジャレットがソリストを務めるモーツァルトのPf協奏曲集(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005FHPG/)の輸入盤を見つけたので購入した。

とりあえずoggにエンコードし、翌日の昼休みにピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595を聴く。あまりの浄福さに言葉を失う。
この曲を書いた時期のモーツァルトは経済的困窮や健康状態の悪化もあってかなりボロボロの状態にある。実際この曲の初演後1年も経たないうちに彼は死んでしまうのだが、この曲にはそうした重苦しさは微塵も表れていない。ひたすら、軽やかだけれども、何人も近づくことを許さない厳しさに満ちた美しさが、ガラス細工の骨組みのようにこの曲を織りなしている。
キース・ジャレットのピアノはそうしたこの曲を、極めて優しく、そして気負うことなく奏でる。確かに時折キータッチが幾分ルーズになる場面がないのではないのだが、それすらもこの曲の気高い優しさを伝えるのに役立っているとすら感じられる。それは、芸術という語が含意しつつ押しつけがちな美学の主張ではなく、むしろ穏やかに、語りかけてくるような印象すら覚える。
「確かに色々嫌なこととか醜いことはいっぱいある。悲しくなることなんて毎日ある。けれども、だからといって美しいものが存在することを否定するのは淋しくないか?」
第2楽章の静謐な終末の彼方に現れる第3楽章のピアノのロンド主題は、そんなことを教えてくれるような気がする。そして恐らくモーツァルトは、美しいものがあるのならば、少なくとも形而下の塵埃を全て捨象したとしても生は生きるに値するかもしれないということを、200年以上の時を越えて示してくれるように私には思える。


有害な正しさをその顔に塗るつもりなら私にも映らずに済む  (2008.03.11)

A.グゼリミアン編『バレンボイム/サイード 音楽と社会』を読む。この前まで読んでいたアドルノ『新音楽の哲学』の豪快な難解さに比べると、対談集ということもあり、大変読みやすい。

サイードはアイデンティティに関して冒頭、こう言う。「アイデンティティというものはひとまとまりの流れ続ける潮流であって、固定した場所や安定した対象に結びつけられるものではない」。バレンボイムは答えてこう言う。「複数のアイデンティティを持つことは、単に可能だというだけでなく、望んでしかるべきものなのだ。複数の異なった文化に属しているという意識は、ひたすら自分を豊かにしてくれる」。

所謂文化人としての彼らのアイデンティティに関する視点は、特定の環境に拘束されなければ生きていけない私のような人間のそれとは違う。複雑な出自を持ち、複数の言語を自由に操る彼らと、生まれも育ちも就職先もメード・イン・ジャパンな私では大型ジェット機と三輪車くらい人間性のスケールも違うのは一目瞭然である。

だが、それでも上記の二人のやりとりはある種の眼差しの転換、とも言うべき示唆を与えてくれたように思えた。複数のアイデンティティを、固定した対象に結びつけることなく持つことは可能なのだ、という宥和の可能性がそこには明確に肯定されているからだ。

そしてこのような見方は、彼らの他者観をも反映している。彼らは他者の問題に関しては等しく徹底的な唯名論であり、存在するのは個物だけであるというオッカムの有名な定義を共有している。むろんその背景には複雑な文化的・政治的問題がモザイク状に錯綜しているとしてもだ。

この点がおそらく愁眉を開く一つのきっかけになっているようにも思う。即ち、経済の横暴は我々を常に集合概念に包摂し、政治の蒙昧は国民を「血と大地」の紐帯でもって一つの大集団であるかのような幻想を散布するが、実はそれはまやかしであって、私たちは一人一人が一人一人としてそれぞれ異なった存在者であるということを、彼らの言葉が思い出させてくれるからだ。そしてその言葉は自己自身の再肯定、「全体こそが無誤謬であるという恐怖」からの希望に満ちた逸脱を教えてくれるのだ。


今でも時々、外国で受けた数々の人種差別を思い出す。また、日常でも私の背後に透けて見える数々の劣等的要素に起因する屈辱に切歯扼腕の思いをすることは少なくない。だが、こういった言葉に触れると、もう一度思い直すことができるように思う。存在するのは個物だけだ、と。


オザミトーキョーに行ってきた  (2008.03.08)

昨晩はマイミクの数人を含めた合計8人で丸ビル35階のオザミトーキョー(http://www.auxamis.com/tokyo/index.html)にて食事会だった。女性4名、男性4名のいわゆる合コンですな(笑)。

人数が多いとコース以外は認めん!という楽しい要求だったので、1万2千円のコースを予約。供されたのは以下のような内容でした。

1.アミューズ ブーシュ
2.カスピ海ロシア産最上オシェトラキャビア そば粉のブリーニ添え
3.フランス産鴨のフォワグラとポワロージューヌのテリーヌ モザイク仕立て
4.酒蒸しにした黒あわびのムニエル、うどのベニエ、ホワイトアスパラガスのソテー〜春の一皿〜
5.伊勢エビの石焼きグリエ、白ワインと香草のソースで…
6.お好みでの肉料理
7-0.アヴァンデセール
7.茨城産フルーツトマトの軽いコンポート、ミルクシャーベット落合ハーブ園の香草たちのジュレ添え

酒も結構飲み、ポマールをメインに4本ほど。食前酒はJ.Rassaigneのシャンパーニュで。

さて、食事の感想。
極めて率直に言うと値段分の価値はありません。夜景が見事な店なのですが、夜景自体は35階のロビーからでだってタダで眺められるので、それは値段のつり上げ要因にはなりませんね。以下料理について各論。
1.アミューズブーシュ
イベリコ豚のサラダだったのですが、今時イベリコ豚かよとちょっと白けたというのが正直なところ。付け合わせのコルニションがパサパサで、酢の旨味が全く感じられず。

2.カスピ海ロシア産最上オシェトラキャビア そば粉のブリーニ添え
これはそんなに悪くなかったです。でも個人的にはイラン産のベルーガの方がおいしいとは思います。ものすごい高いので接待専用ですが。

3.フランス産鴨のフォワグラとポワロージューヌのテリーヌ モザイク仕立て
フォワグラが生臭すぎて葱で抑え込んでいるのがミエミエのモザイク仕立て。無理しなくていいので、フォワグラと菜っ葉とジュレでいいです。もしかするとフォアグラが苦手な人向けの配慮なのかもしれませんが、そんな人はこのメニューなんか頼みません。

4.酒蒸しにした黒あわびのムニエル、うどのベニエ、ホワイトアスパラガスのソテー〜春の一皿〜
独活自体と白アスパラは結構おいしかったです。鮑は切り方を変えた方が視覚的にも味覚的にもおいしいと思う。

5.伊勢エビの石焼きグリエ、白ワインと香草のソースで…
白ワインと香草のソースがひどすぎ。香草にはエストラゴンがあしらってあったようですが、伊勢エビの旨味と甘味を殺す方向でしか作用してないです。仕方ないのでソースは全部パンと一緒に食ってしまいました。

6.肉料理
左大臣は子牛の頬肉のブルゴーニュ風煮込みを注文。そんなに悪くなかったと思う。ただし、ガルニチュードのジャガイモは多分普通のメイクイーン系だと思うのだが、(有機栽培の商品を使っていたとしても)いただけない。コストアップになるのは承知の上だが、シンシア種を使うべき(余談だがフランスのマクドナルドではフライドポテトにシンシアを使っているので、世界で一番うまいとの評判がある)。

7.茨城産フルーツトマトの軽いコンポート、ミルクシャーベット落合ハーブ園の香草たちのジュレ添え
これはおいしかった。材料の入手困難性を除けば私でもトライできる難易度のように思われたので、時間があるときにやってみようと思う。

8. 給仕について
商売っ気が強すぎる。皿と皿の間が長いのは承知で酒を飲んでいるのに、瓶が空いたらすぐにワインリストを持ってくるのは興ざめ極まりない。
また、オザミはワインリストが充実しているのが評判のはずだが、トカイワインを扱っていなかったり、新世界ワインのリストも少ないのが気になる。勿論、給仕の人間は細かい質問には答えられないし、ワインラベルをお土産用に加工するのも頼まないとやってくれない。左大臣の会社の近所の某イタリア料理店Gの山下さんは頼まなくても全部やってくれましたよ?

結果総支払額は「ゴチになります!」級だったのはここだけの話ですが、みんな楽しめたので良かったと思います。でもオザミには個人でも二度と行きません。隣のビルのAu goût du jour nouvelle èreに行きます。


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