2004年12月
ねんまつ  (2004.12.31)

 新年は、死んだ人をしのぶためにある。
 心の優しいものが先に死ぬのはなぜか、
 おのれだけが生き残っているのはなぜかと問うためだ、
 でなければ、どうして朝から酒を飲んでいられる?
 人をしのんでいると、独り言が独り言でなくなる、
 きょうはきのうに、きのうはあすになる、
 どんな小さなものでも、眼の前のものを愛したくなる、
 でなければ、どうしてこの一年を生きてゆける?
                                 (片桐雅夫「きのうはあすに」)

生き残ってしまった事への無力感と罪悪感を抱きつつ。

皆様、良いお年を。


ドカン  (2004.12.30)

スマトラ島沖地震のニュースを見ていて、死者数が12万人以上になりそうだという話を聞いた。
阪神淡路大震災の死者数がおよそ6000人だから、いかに甚大な被害であるか分かろうというものだが、12万人という死者数は広島に原爆が投下された直後の死者数と余り変わらない。被害地域が一都市かインド洋沿岸諸国かという違いはあるものの、一発で今回の地震&津波と同じくらいの人間を抹殺できた原爆の破壊力の凄まじさに、一人の人間として驚愕を新たにせずにはいられない。今回の地震でもプーケット島辺りでは「どこもかしこも死体だらけ」という惨状らしいから、当時の広島は言語に絶する地獄絵図であったろうということは容易に見当が付く。

何というものを、人間は作ってしまったのだろう。


パケインテラ  (2004.12.25)

古代ラテン語で書かれた聖歌とかの歌詞を読んでいたり聴いていたりして感じるのは、響きとしてかの言語が非常に美しいということだ。特定の言語が綺麗だの汚いだのと形容するのは本来極めてバカバカしいことであるのは別段今更言うまでもないことではあるが、特に定型詩を聴く時に古代ラテン語の音律の簡素さは逆に雄弁さになるように思われる。ラテン語は格変化が簡単だから脚韻も踏みやすいのは事実だが、こうした定型詩が持つ有無を言わせぬ構成力の持つ力は偉い。ううむ、古典語の勉強を再開するべきか。

高校生の頃、私の文章の表現力を評価してくれたある教師から、お前の文章は晦渋に流れる嫌いがあるから俳句と短歌を勉強して簡明な表現を目指せと言われ、半年ほど取り組んだことがある。形式なんか糞喰らえと鼻息の荒かった当時の私ゆえ、結果は実を結んだものとは言い難いし今でも私の文章はご覧の通り「バロック的」とも揶揄されるグチャグチャなものなのだが、定型詩に対する考え方はここ数年で大分変わってきたように思う。それは一定の形式的要求に表現行為を従属させることの意味からである。

形式的要求に表現内容を従属させることは、一般には個性の抑圧として好意的な見方をされない。だが同時に、表現の形式的側面に腐心することは、同時にその表現のあり方を再検討することにも繋がる。卑近な水準ではそれは誤字や修辞上のミスの削減という点からも有用だが、最も重視されるべきはその内容に対する反省であろう。「言いっぱなし」をともすると促進してしまう自由詩のあり方は、その内容が妥当しうるものであるのかの検討以前にその内容の遂行的正しさを個性の尊重という美名の下に確定してしまう。チャット同然のメッセージもどきが巷間に溢れるのはそのことと無関係ではあるまい。

その時に定型詩が要求する形式的側面は反省における一つの基準を示してくれる。それが正しいかどうかはともかくとして、その基準に従うことは自我の放恣と暴走を抑止する契機になるのではないか。例えば漢詩における平仄と押韻の規則は煩瑣極まりないものだし、古代ギリシア詩におけるダクテュロスは私のような阿呆にはテキストで読んでも全然理解できないのだが、まさにその故にこそ駄作は徹底的に排除されてきたのではないのか。ゴミみたいな歌が公共のメディアを占領する状況を目にするに及んで、私はどうもそう考えざるを得ないのだ。


真っ暗に  (2004.12.24)

セブンイレブンで弁当を買ったら、店員がサンタの恰好をしていて少し笑った。


電車の中でグールドのゴールドベルク変奏曲を聴く。死の間際にデジタル録音された盤だが、最後のアリアの静謐さに言葉を失う。認識の真理を暗示するものとしての芸術である音楽が死に滅びんとする荒廃した光景を予見切っているかのような透徹した絶望が極めて遅いテンポ設定で、物象化された我々の生の時間を切り裂いてゆく。
だから、この旋律は、音楽でありつつも音楽であることを拒否している。グールドのアリアは鳴り響かない。それは立ち停まり、無限に広がる漆黒の虚空をなだらかにどこまでもどこまでも静かに墜ちていく。そしてついに光も届かず、我々の手の届かない永遠の深淵の底で、誰にも聴かれることのない旋律を静寂の中で刻み続けているのだ。


血塗れ  (2004.12.23)

レポート書いたら血塗れの添削。
少し凹んだです。

休日にデータの手直しをする必要もあるので、やむを得ず秋葉原でMSOfficeを買って帰る。高えよ。
大昔にロータスとかコーレルとかとオフィススイートのシェアを巡って縄張り争いしていた時には一番高いやつでも3万くらいだったような記憶があるのだが、今じゃアップグレード版ですらそのくらいの値段がしやがる。新規に導入する場合には5万くらいするですよ奥さん。

これは市場独占による価格のつり上げではないのかい? M$は「テクノロジーとユーザー体験のうんたらかんたら……」とどうせ抜かすんだろうが、高いものは高い。
そんなわけで仕事用に購入する予定のサブマシンには一応MSOfficeを入れるかもしれないが、他のマシンにはOpenOfficeとかStarSuiteを入れようかと考えている今日この頃。慣れたLotus使いたいんだけど、開発止まっちゃってすでに死亡状態だからなあ……


ちょいと  (2004.12.18)

一日12時間労働。人間関係が至極ドライなので楽と言えば楽なのだが。すっかりエクセル土方である。

以前勤務していた職場はいわゆる進学塾だったことは想像が付いたと思うが、そこの某教室長に「サンドイッチボーイ」(もちろん仮名)と渾名される人物がいた。石塚英彦から愛嬌を取り去ったような体躯の彼は、打ち上げなどでカラオケ屋や飲み屋に繰り出す折には、決まって女子生徒の性的な要素について口にしていたという。私は彼と極めて折り合いが悪く、直接話をすること自体が皆無だったこともあってそういう醜い光景を直接目にする機会には恵まれなかったのだが、そういうロリペド野郎が現実に近くにいるということだけで私は嘔吐を禁じ得ない。内面性に対して云々するならまだ考えようがあるかもしれないが(ないけどね)、そういうことを平然と口にできるメンタリティと歪んだ性的嗜好は正直救いようがないな、と思った。彼の容姿の逸般度は誰もが認めるところではあるのだが、だからといって歪んだ性的嗜好を部下達の前でも口にしていい訳では無論ない。

私が前職を辞める意思を固めたのはそういうことを仄聞したからでもあるのだが、思い出すだけでも嫌悪を抱いてしまうようなああいう世界から足を洗えたのは幸運だったと思う(しかもロリペド講師は他にも何人かいたようだ)。しばらくは体力的にも能力的にもかなりキツい状態が続くだろうが、腐海から脱出するための期間としては仕方あるまい。職場の近所はジャンキーなメシ屋しかなくて閉口するとしても。


いえーい  (2004.12.14)

一日12時間労働だぜイエーイ(;´Д`)
ディスプレイと書類のにらめっこばかりしているのでドライアイで眼球が爆発しそうだイエーイ(;´Д`)
データの仕様から教えればいいのにそれをまず自分で考えろとか言われてエクセル相手に格闘してイエーイ(;´Д`)

おやすみなさい……


まるでカフカのやうだ  (2004.12.10)

で、職安行って来たですよ。

12時4分に現地に到着したところ、完全に昼休みモードで1時間ばかり待ちぼうけ。仕方がないので近所の本屋で立ち読みなどをして時間を潰す。紀伊國屋書店のくせして思想書のコーナーが抹殺されているという現状に微笑を浮かべつつ、米田聡の連載が大幅に減ったDOS/Vマガジンを読む。

そうこうして、1時過ぎにカウンターに行ったところ渡されたのが右の書類。ハンコを2×4つも会社に押して貰わんといかんのだよ。あひゃー、雇用証明書だけでは足らんのかい?!
こういう書類は最初から渡せばそれにかかる手続きも大分軽減されるというのに、申請に行ったら更に追加の書類を要求するあたりは殆ど悪意があるとしか考えようがない。これらの追加書類の話は職安で渡される「受給資格者のしおり」には一言も言及がないのである(もちろん失業認定時の講習でもそんな話は全然出てこない)! すげー。
千葉県の職安の規定では早期就職支援金で支給される上限額は自己都合退職の場合およそ36万円(ちなみに私の場合受給できる金額はおよそ18万)なのだが、その程度の費用を何でここまで手続きを煩雑化して厳格化するのか全く分からない。その審査に掛かる人件費を考えると、手続きを簡素化して書類一枚で済むようにした方が余程合理的というものだ。ちなみにこの支援金、来年の3月まで少し額が上乗せされるのだが、支給審査をしているのは財団法人高年齢者雇用開発協会という天下りスメル全開の特殊法人。なんかこういう書類の枚数稼ぎ周辺に利権の香りがプンプンするんですが気のせいですか?

その昔ある独身女性が失業保険の申請に行ったら「身体を売れ」と強烈なことを言われて自殺したという話があったが、担当職員のロボットばりの対応や失業認定時の講習の屈辱的な内容(減点ワッシワッシの人対象の免許更新講習を連想すれば大体正しい)を見るに、資本主義は人間をゴミにするのねと資本論のブルースがどこからともなく脳内に流れてくるのであった。これから仕事を捨てようという方はある程度そのあたり鉄面皮になることをお勧めしておきますですハイ。


イオジオ兄さん買った  (2004.12.09)

さて、今度の勤務先までは電車で片道1時間半かかる。中高での通学ルートとかなりの部分被るのだが、当然その時間帯は殺人的な通勤ラッシュに正面から激突するので、車内で本を読むことなどほぼ絶望的に不可能。

そんなわけで音楽でも聴いて気を紛らわすべきということで、再就職支援金も支払われるので、iAudio M3の20GBモデルを買ってきた。40GBは価格が高いのとフォーマットが面倒くさいということで断念。何でiPodとかGigabeatじゃないかというと、CDをリッピングして保管するのに普段はVorbis Oggを使っているから(ものによってはFlacとかApe)で、このファイル形式が再生できるのは他にはRio KarmaとiRiverしかなく、前者は生産がとっくの昔に終わっているため入手が極めて困難だから、そして後者はデザインが余りにもアレゲだからでもある。そもそもGigabeatとかNetworkWalkmanなんて著作権対策の仕様が邪魔すぎてとても使う気にはなれんよ(;´Д`)

で使ってみたところ、確かにこれは便利だ。容量が大きいので、UMSをサポートしているOSなら外付けHDDとしても使えるらしい。音質もそれなりに聴ける水準。最近のテクノロジーというのは凄いなあ。


誰かあの中学生を出力オペレーターとして雇ってやれ  (2004.12.08)

年賀状のシーズンが近づいてきたせいか、各社とも色々とプリンタの新機種を発売していて、エプソンなんかはあややとセットで力業宣伝の嵐。セットの背景が某対戦格闘ゲームにソックリだったりするが、

画質で宣伝すんのはもう止めにしろや!

高品位専用紙でのプリント時の解像度が1200*2400dpi以上なら、少なくとも私のような素人の目には解像度上の区別はほとんどできない。そんなに高品位の出力が欲しければ昇華型プリンタでも買えばいい。高いモデルになると300万くらいするので出力センターでもない限りおいそれと買えるものではないが、A4判程度までしか刷らないのなら安価なモデルも沢山存在しているのだからそれで十分。例えばOLYMPUSのP-400なら5万円くらいですよ奥さん。インクとか専用紙は発狂するほど高くて互換品も存在していないのが玉に瑕だけど。ちなみに町の写真屋さんでデジカメプリントを頼むと出力してくれるのはこの系列のプリンタです。

むしろ考えるべきなのは「エプソン病」とも揶揄されるノズル詰まりである。エプソンがここ2〜3年でキャノンにあっさりシェアを持って行かれたのはこの問題が大きいことは誰でも理解している。起動時にヘッドクリーニングと称して大量にインクを無駄遣い注1したり、インクカートリッジにチップをくっつけてサードメーカーの詰め替え&互換インクを使わせないようにする注2という阿漕な戦略もさることながら、一月以上使わないとあっという間にノズル詰まりを起こして修理センター直行という凄まじいヤクザ仕様ではそりゃユーザーも逃げるというものだ。かつて私も店員に勧められるままに二台エプソンのプリンタを購入して使っていたが、黒インクはともかくカラーインクが余りにも頻繁にノズル詰まりを起こすのにブチ切れて観音様に宗旨替えしてしまった。アメリカなどでは旧エプソンユーザーがHP注3に乗り換えたりしているらしい。
今までのプリンタの販売モデルというのは本体を赤字が出てもいいからガンガン安売りして、インク代と紙代で利益を出してコストを回収しようというやつなのだが、どっかのゲーム機みたいなこういう戦略はもういい加減消費者の敵対を買うだけだと思うよ。プリンタを買う時に「高ェェェェェェ!」とは思っても、画質とか使用感が満足ニヤニヤできるものだったら、大概の人はそういうことは忘れてしまうですよ。むしろインク切れという緊急事態にあわてて電器屋に行ったらすごい値段が値札に付いていたり、印刷している時のプリンタの悲鳴やらグチャグチャになった失敗プリントを目にしたりするうちに、多くの人はプリンタメーカーを親の仇同然に感じるものだ。それともエプソンはこれからもビギナーユーザーを騙す戦略を続けるつもりなのかね。


注1 どこのサイトだったか忘れたが、イギリスの消費者運動サイトでやったテストでは、どこかのメーカー(わざとぼかした表現をしていた)のプリンタが起動時のヘッドクリーニングのためにインクを2本(!)無駄にしてしまったという事例が報告されていた。カラーインク2本なら5000円はくだらない。近所でならおいしいお寿司が食べられるよ……

注2 エプソンはその昔PC-9801(「国民機」とも呼ばれた、シェア85%の怪物マシン。一太郎とロータス1-2-3と98を所有することは当時社会人の義務であった)の互換マシンを作ってNECと法廷闘争していた。NECはMS-DOSとかにエプソンチェックと称する互換機排除プロテクトを掛けて発売し、エプソンはそれを解除するツールを添付してマシンを売っていた。ちなみに件のチップについては書き換えを行ってプリンタを騙すためのツールが各社から発売されているが、専用工具を使ってインクカートリッジを分解する必要もあったりするため、素人には少々辛い。

注3 HPのプリンタはインクカートリッジがプリンタヘッド一体型であるため、ノズル詰まりを起こしても新しいインクを買ってくればいい。無論ノズル分だけインクは割高だが、詰め替えインクが多数発売されている。


けてーい  (2004.12.06)

再就職決定!

というわけで今日は寝ます。来週月曜から勤務。


書けました  (2004.12.05)

「独り言」に一つ追加。
今ひとつ消化不良ではありますが、まあ一旦しめてみました。
こちらからどうぞ。

で、DALF(11/30日記参照)受けてきましたよ。
「学校は言語教育において十分か?」というお題について10分前後の口頭発表をするというもの。
「十分かという問いは教育の要素を量的なもので判断するという考え方であり、そんなことする前に外国語でも日本語でもいきなり見知らぬ人から尋ねられるとアウアウしてしまう日本人のメンタリティーをどうにかしないといくら金使ったってダメだろ」という感じで述べました。面接官の質問はまあ当たり障りのないものでしたが、細かいミスをいくつかやってしまったので13点(フランスの試験は原則として20点満点。17点が事実上の可能最高得点)くらい取れれば上出来かな……


めんせつー  (2004.12.02)

面接続行中。ストレスで胃がダメになりそうだ。痩せられるけど。

ただいま論考を一本書いてます。難航中。


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