※このページで掲載した写真は下の地図に示した地点で撮られています。下記のインタビューを受けたところが赤の●、青、黄緑、緑、濃い灰色の●はそれぞれ1、2、3、4枚目の撮影地点です。 このページの地図

★マイクを向けられたり

  ヴォルテール大通りはこのまま行くと一直線にナシオン広場に行ってしまうので、タンプル大通りへと軌道修正をすべしということでJ.P.Timbeaud通り(左地図赤丸)を通っていたところ、前方から録音用マイクとカメラを装備した3人組のおっさん達が。取材陣多いなーと思って通り過ぎようとすると、「すみません、お掛けになっているプラカードについての説明等をいただけますか?」とマイクを向けられた。おおすげえ!プレスだよおとっつぁん!マイクに着いていたマークによればどうやらラジオフランスのクルーらしかった。
  無論ちょっと慌ててでありましたが、答えさせていただきました。「私は日本人ですが、正面に掛けているプラカードは広島で原爆のため一瞬にして亡くなった犠牲者が腰掛けていた銀行の敷石に残っていた『影』を用いたもので、背中に掛けているのはダッハウとベルゼンの強制収容所におけるユダヤ人虐殺の写真です。知っての通り、ルペンは『ヒロシマやアウシュヴィッツは歴史の些末事に過ぎない』と言っています。これは許し難いことです。また、FNの副党首であるゴルニッシュ氏はリヨン大学で日本語を教える立場であるにもかかわらず、これらの発言を看過しています。これらの無知を告発し、彼らの歴史認識がいかに間違っているものであるのかを批判するのがこのパネルの意図です、私には大統領選挙権はないのですが。もちろん、私は彼らの政策は間違っていると考えています」。慌てて話したせいもあってか構文とか文法とかメチャクチャだったので、放送に使われたかどうかは分からないけれど、こういう参加者もいるのだということが伝わればそれはそれでいいのだとは思う。そりゃ勉強はもっとせにゃならんけど。



仮設ステージ

★メーデーは労働者の祝日

  言うまでもなく、メーデーはアメリカの労働運動に由来する労働者のための祝日である(古代は花祭りなどもこの時期に行われていたようだが)。ルペンが決選投票に残るということさえなければ今年のメーデーも労組が行うデモとお祭りがメインになるはずだったのだろう。それもあってか、トレーラーの仮設ステージなどを繰り出してライブをやっている団体もあった。歌詞の内容はそれでもやはり基本的にはルペンを叩くもので、時折シラク圧勝が確実視されている決選投票そのものを揶揄するものもあった。近くにはホットドッグとかサンドイッチ、ジュースにビールを商うスタンドも出ていて、屯するには全く打ってつけだったりする。
  仮設ステージはトレーラー上に設置され、一応はトレーラーも微速程度では動いているらしいのだが、実質的にはほとんど前へと動いていない。こんなのが何台も出ていればそりゃデモ隊は進めないよなあ。実際、タンプル通りなどを通るほとんどの人は脇の歩道を歩いていた。


Rue Oberkampfだったと思うんだけど……
  1ページ目に示した図では主な通りばっかり人で埋まっているかのような印象を与えかねないのだが、脇道もご覧の通り人でいっぱいである。どこからこんなに人が出てきたんだと思うくらい通りという通りが全て黒山の人で埋まっているのである。ヴォルテール通りの方はそれでも人通りがなめらかなのだが、みんなやはりこちらの通りに来ようとするため、ボーマルシェ通りに入るまではデモ隊列は文字通りギュウギュウ詰めだった。
  そして、この近所でもプレスの取材を受けた。彼らは二人組でポスターやらアジビラなんかを撮影していたのだが、そのうちの一人のおばちゃんが「ちょっと写真いい?」と言ってきて私の全身写真と胸に掲げていたパネルを撮っていった。
  本来なら翌日にでも新聞を購入して自分のが載ってないか探すべきなんだけど、翌日は完全に疲労して夕方まで寝てました。大陸の人間って、みんな頑丈すぎだよ……。食い物という食い物が片っ端から高カロリーなのも分かるような気がするなあ。私はこの日は朝にミュースリを牛乳とセットで食っただけだったし、その差を尚更ヒシヒシと感じるのである。

フランス演劇連盟
  トリコロールを掲げているのはフランス演劇連盟の皆さん。南仏のアヴィニョンは市長がFNであり、有名なアヴィニョン演劇祭などを巡って前衛演劇を排除しようとするFN(=市長)と演劇関係者の間で激しい争いが起き、アヴィニョンには一週間に渡って最大5万人のデモ参加者が連日押し掛けたというできごとが以前あった(国鉄はその時無料夜行列車などを出して協力した)。それもあってかフランス演劇連盟は反FNで一致しているらしい。
  なお、この近所ではUNEFの学生記者らしき人に写真を求められました。私はかなりの老けヅラなのだが、それでもやはり学生に見えるのかな。

緑の党
  こちらは緑の党。緑の地に向日葵をあしらった旗が赤と黒ばっかの他団体の旗の中では異色を放ってますな。こういう表象の展開を見ていると、緑の党っていうのは「柔らかい左翼系市民運動」としての素地を提供している組織なのかもしれない。イデオロギー的な階級闘争理論に固執しがちな旧来の極左に替わって、別の意味での抵抗する政治運動を提起するという意味では、緑の党というのはポストモダン的な市民政党でもある。
  緑の党も今回のデモにはトラックを繰り出していて、テクノやらラップなどのダンスミュージックを大音量で流していた。そのトラックの上ではアラブ系とおぼしきあんちゃんが一人上半身裸でクネクネ踊っていた。マッチョでなかなかいい体をしていたが、寒くないのかよ……。
  ちょっとでもよじ登れそうな所は全て人でいっぱい。みんなどのくらいの人が出ているのか知りたいらしい。確かにレピュブリック広場を上から撮った写真は完全に真っ黒になってたからなあ。
  なお、この撮影地点の近所には小さな広場があるので、そこで小休止。


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